私たちはボランティアではない。必要だから障がい者を雇用するんです。


「じゃあ今度は、愚痴も聞いてもらおうかな。(笑)」

大山社長が笑いながら、静かにこう呟きました。

「私も3代目の後継者なんです。今日訪問させていただいたこの仲間達、後継社長が
大半なんですよ。」

それは、会社訪問を終えた帰り際に私がこうお話した時でした。

同じ経営者、後継社長として、昨年亡くなられた先代から引き継いだ思いや葛藤、
そして大山社長の優しい人柄を垣間みた気がしました。

日本理化学工業(株)さん訪問

奥ノ谷塾2020年第1講の2日目は、奥ノ谷塾で何度もお世話になっている、京都造形芸術大学の本間正人先生からのご紹介で、日本理化学工業株式会社  に会社訪問をしました。

これまでベストセラー「日本でいちばん大切にしたい会社」や、カンブリア宮殿、他、数多くのメディアで紹介されている超有名な同社。

私も会社名と「多くの障がい者を雇用しているチョークを作っている会社」として、以前より大体の概要は知っているつもり、つもりでした。

そしてそのような会社なので、会社訪問はとても多いはずだし、それに慣れていらっしゃるはず。会社案内も、その係の方が、順番通り、時間通りに行い、私たちはそれに添って進んでいくだけ、、、

始めはそう思っていました。
しかし、それは全く違うものでした。

大山社長のお話

作業服を来た男性が入ってこられ、自己紹介がありました。

新型コロナウィルスの影響で、マスクをしたままだったのでよく聞こえず、「私の父が、、、」と言われるまで、この方が「大山社長」だとは気がつきませんでした。
(笑 申し訳ありません!!)

社長自ら、ご自分の言葉で熱く語って下さいました。
私もその語り口調と、正直な人柄に魅了され、一言ももらさず聞き入り、
身体が震え、目頭が熱くなる場面もありました。

私たちの質問にも、時間をかけてすべてに真摯に応えていただき、訪問予定時間を大幅に超えてしまったようです。

入り口で記念写真を撮っている時に、次のお仕事のお客様が来られました。申し訳ありませんでした。

会社経営として彼らが必要だから採用する

83期目を迎える同社は、従業員86名のうち63名が障がい者(内25名が重度)。

チョークの生産は、全国7割のシェアを持ちます。その8割は学校の黒板の用途です。

ところが、、、大山社長は続けます。

少子化が進み学校は減っている。そして黒板からホワイトボードへ。さらにPCや電子黒板の
普及が加速する。3年前、業界第2位のチョーク会社が廃業、、、

決してラクではないし、これからの経営課題は数多くあります。

障がい者の雇用は、61年になります。計画したわけではなく頼まれたので、最初は
断ったそうです。

しかし、最初に採用した15歳と17歳の社員は、それぞれ68歳、65歳まで勤めました。
それがこの写真。

68歳の彼女と先代創業者の大山会長

61年前、当時障がい者はどのような扱いをされていたでしょうか。
現在のインクルーシブを叫ぶ時代とは、真逆だろうと想像がつきます。

61年、障がい者を雇用し続けるわけ

それは、会社経営として彼ら彼女らが必要だからです。

ボランティアや社会貢献と言う理由で、障がい者を採用しているわけではないのです。
私たちは企業です。企業として売り上げも利益も追求している。
彼ら彼女らは、戦力です。私たちと同じであったり、またそれ以上の立派な技能を持っている。
だから、採用するんです。

どのように採用されているのですか?

どのように採用されているのですか?  そう質問しました。

その人の特徴や性格を把握し、実際の仕事をシミュレーションしながら、何度も面談を重ねる。

そして、社員は決して辞めさせない!

結果、辞めないそうです。

だから、採用はもちろん定期的なものはなく、何かあった場合に必要があれば、のようです。

さらに、社員の皆さんはみな責任感が強く、そもそも休まない。

安心して通う、居場所がある。

この会社はそんな暖かい場所を作っています。

相手の理解力に合わせる工場

仕事にはマニュアルがあります。人はそれに合わせる。

しかしこの会社は、相手の理解力に合わせて独自のマニュアルや方法を数多く作成して、
運用しています。つまり、人に合わせる。

数字がわからない人には、色で判断出来るように、測れない人には、一目瞭然に良し悪しが判断出来る器具を作ったり。

それが結果的に、誰もが使いやすく間違えなくなる。

伝わらないのは相手の能力のせいではなく、それを教える方が工夫しないのが悪い。

捉え方、理解力は人それぞれです。
一つの伝え方で皆んながわかるわけがありませんよね。


業績で強さを証明するしかない

60年間障がい者雇用を続けている強み、そのノウハウを持っていることを証明するには、会社が強くなければならない。
私たちは、皆さんと同じ企業ですから。
障がい者だから出来ない、とは絶対に思わない。諦めるか、諦めないか、
だけです。

それを証明できるのは、業績だけなんです。

私は、日本理化学工業さんは、社会貢献の色がかなり濃い会社だと思っていました。
でも、それは大きな大きな間違えでした。

企業として必要だから使う。

60年前からその力を信じて、障がい者として対することなく、皆んなで一緒に経営して
きた。

言葉が出ませんでした。

キットパス(KITPAS)

キットパス(KITPAS) って聞いたことありますか?
私は初めて聞きました。

キットパスは同社が開発、販売している商品名で、新しいチョークです。

万が一お口に入っても安心な素材で出来ていて、窓ガラス等ツルツルな所に描いて、水拭きで簡単に消せるカラフルなチョーク。水溶性なので、水筆を使えば水彩絵の具のような書き味にもなります。

「すべての人に楽がき文化を!」

を理念に、お風呂場でも親子でラクガキが出来る楽しい商品です。

現在、工場の20%の生産がキットパスだそうです。

もちろん、もっともっと知ってほしい! と大山社長。

キットパスが有名になって、売れて、

「ああ! キットパスって、あの理化学工業さんが作っていたんですね!!」

そう言われたいですよね。

宣伝しますねっ!!

最後に

これは、昨年亡くなられた、大山社長のお父さんに宛てた、「感謝の言葉」です。
偲ぶ会で参列者に渡されたようです。

キットパスでとった、お父さんの手形です。

感謝の言葉

父は最後の約半年を病床で過ごしました。
行くたびに「皆働(かいどう)社会」実現に向けた話をいつも語ってくれ、まさに人生をかけて最後の最後まで自分のやるべきことを全うしました。
何回も聞いていることなのに、出ない声を振り絞って懸命に話す姿に感動し、神々しく見えてしまうことさえありました。
そして、病室を出る前には、いつも握手をしてもらいました。
とても暖かく、その手からは精一杯の優しさが伝わり、それは涙が出るほど嬉しい瞬間でした。
声がほとんど出なくなっても、手で意思を伝えてくれ、時には笑わせてくれる
こともありました。

最期まで優しく、温かく、そしてかっこいい父でした。
息子でさえもあなたのファンにさせてしまうのは、やはりあなたは素晴らしい。
心からそう思います。

お父さん、ありがとう。

大山隆久

ブログ紹介

奥ノ谷塾 短パン社長の熱い熱いブログは必読です!! 

2020年奥ノ谷塾第1講、2日目。
本当に勉強になりました。
ありがとうございました。

The following two tabs change content below.
岡崎博之

岡崎博之

私は1963年、東京の下町両国に岡崎家の長男として生まれました。 生まれも育ちも、住まいも会社も、みんな両国のチャキチャキの江戸っ子です。せっかちで、いつもかなり熱くなっちゃう怒りん坊、、、だけど涙もろい性格。(笑) 家業の60年を超える老舗ニット会社、丸安毛糸株式会社の3代目社長になり、14年が経ちました。 これからは「世界中のニットを愛する人たちが集う会社」を目指して、どんどん世界に出て行きたいな。 海外留学の経験から、世界の人と交流することが大好き。旅をすること、ゴルフをすること、美味しいものをたくさん食べることが、大切なライフスタイルです。最近はそれに加えて、カメラを持ち歩きたいな!なんて考えています。
スポンサーリンク

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です