フライングジーンズ誕生物語


「私たちが履けるパンツを、作ってくれませんか?」

昨年、エクスペリエンス・マーケティングの上位塾エヴァンジェリスト・コースで、偶然同期になったのが、加藤健一さん(ニックネーム:けんぼー)が、ふと私にそう言いました。

私ははじめて、障害を持つ人と関わりました。

温泉旅館で行われたマーケティング塾の合宿。

塾生皆んなで、けんぼーを温泉に入れます。

衣服を脱がせ、車椅子の椅子にタオルをしき、裸のけんぼーはそこに座ってもらいます。
車椅子ごと湯船の淵へ。タオルの両側を2人で持ちながらけんぼーの身体を一度淵に降ろすと、後はそのまま身体をずらしながら湯船へ。

お風呂から上がったけんぼーは、車椅子に座ってもらったままタオルで拭いて、服を着せます。
Tシャツ、シャツは普通に着れるけど、かなり気になったのはパンツ(ズボン)でした。

サイズ感もおかしいし、股上は浅い。腰やお尻の位置とパンツのラインがどうもビシッと噛み合ない。
お腹の肉がベルトに乗り、、、どう見てもカッコ悪い、、、それに、めちゃくちゃ履かせにくいな。

その時、口には出せなかったけど、

「だからスエットとか、履きやすく、履かせやすいものになっちゃうんだろうな、、、」

お洒落な服より、履きやすさを重視しちゃう。
そう思ったよ。

そんな私の思いを察したのか、

「スエットとかは絶対に履きたくないんです。みんなそうなっちゃうじゃないですか。
カッコ悪いです。」

そして、

「岡崎さん、私たちが履けるパンツを、作ってくれませんか?
普通はもちろん立っていることを前提に作りますよね。でも私たちは常に座っています。
だからかなり窮屈だし、変なシワがよってしまいカッコ悪い。」

その言葉を聞いて、すぐにこう答えました。

やってみるよ!

エクスマ藤村先生、スタッフの方々と、エヴァ16期の仲間たち

はじまりは今年の3月13日でした。

講演を終えたけんぼーは、スーツ姿で私たちの会社に来てくれました。

そのスーツのパンツも何かヘンだな〜(笑)

何を作るか、どんなパンツを作るか、、、

汎用性があり着る機会も多い、またジャケットを着ればオシャレ着でもいける、
まずはキレイめなジーンズを作ることに決めました。

「けんぼーが履きたい、カッコいいジーンズを一緒に作ろうよ!」

ジーンズと言っても、本物のリアルデニムだとゴワゴワするので、私も持っていて普段気持ちよく履いている、カットソー仕立てのスエットのような生地のジーンズだったら、履きやすいしカッコいいのでは?

そして、

履きやすい、軽い、普通と違う座っている人の身体の動き、、、
そんな要望を叶えてくれる縫製工場は、、、

動体裁断

そうだ!

それが、動体裁断・動体縫製(R)の丸和繊維工業さんでした。

同社の深澤社長は以前からよく存じ上げています。私たちの会社から徒歩10分。
早速このお話をしに行きました。
ご快諾をいただき、

ついに!

「けんぼージーンズプロジェクト」が生まれたんです。

動体裁断・動体縫製(R)

人体の皮膚を研究・分析し考案しました。人体の動きにフィットしながら運動を妨げず、着用時に引きつれなどのストレスを感じさせない究極の着心地を実現。これまでにオリンピック出場選手のユニフォームや日本人宇宙飛行士の船内服として用いられている。

けんぼーを丸和繊維工業さんに連れていきました。

SUBARUのドライビング用の服、カクテルのシェイカーを振る人向けの服まで、、、
そんな人間の動きに合わせた服を動体裁断の技術で作っています。

最初にそれに袖を通した時の、けんぼーの嬉しそうな顔!
その笑顔が全てを語っていました。

会社には、大きなデザインされた文字で「感謝」と書かれていました。
けんぼーの活動「Gratitude(感謝)」と丸安毛糸、丸和繊維工業の「丸」が融合した瞬間でした。

私は服の持つ力はまだまだあるはず!!と確信したんです。

私たちは、まだ作ったことのない、「車椅子の人向けのジーンズの開発」が始まりました。

服の持つ力はまだまだあるはず!

以前のブログにも書きました。(以下)重複しますが、、、

お気に入りの服を着ることで気分がいい!
新しい服を着ることで、やる気になる!
春になり明るい色に衣替えをして気分一新!
今まで着たことのない服を着たら、新しい自分を発見した!
お気に入りの服を着続けたいから、頑張って体型をキープする!
綺麗になったら、周りから注目されるようなった!
モテる!
自分にぴったりの服を着たら、仕事の能率があがった!
、、、

服をきっかけに、いろんなプラスのことが起きるんです。

服の持つチカラは、まだまだ沢山あるはずです。

ところが、、、

最近、アパレル不況だの何だのと言われています。
以前より、服を買わなくなってしまいました。

綺麗になりたい。
カッコ良くなりたい。
モテたい。
いい印象を与えたい。
オシャレがしたい。

そんな要望は、もちろん皆んなが持っています。

だけど、そうなる為の方法、選択肢がたくさんたくさん出て来ました。
昔は、服が主でした。
ところが近年では、

メイク
美容クリニック
サプリ
エクササイズ
プチ整形
、、、
何だかんだ、たくさんあり過ぎてわかりません。
それに安価です。

私たち業界の人たちが、そんな要望に答えられていない、それ以上の価値を提供出来ていないのが一番の原因ですが、こうしたたくさんのライバル達が現れているのも、服にお金をかけなくなった、かけられなくなった大きな要因です。

「服の持つチカラ」はもちろん健常者だけのことではありません。

障がいを持つ人たちだって同じように、

綺麗になりたい。
カッコ良くなりたい。
モテたい。
いい印象を与えたい。
オシャレがしたい。

そう思っています。

私たちに出来ることはなんだろうか、、、

けんぼーとの出会いで、服のチカラはまだまだあるはず。
そう深く感じています。

もちろんそうカンタンには出来ませんでした

ストレッチ性のある軽い素材を使っていますが、生地の厚さやそのストレッチのバランスも
難しかった。

股上の深さ、ファスナーの位置、縫い代の位置など、何度何度もサンプルを作り、都度けんぼーに来てもらい打ち合わせを重ねました。

都度しばらく着用しては、履きやすさと履かせやすさの両立を目指したんです。

フライングジーンズ完成!

半年間の試行錯誤の末、一つの形として完成しました。

<『フライングジーンズ』名前の由来>

「空は究極のバリアフリー」「心のバリアフリーを解放する」
空飛ぶ車椅子社長の思いと、履いていることを忘れるくらいの軽い履きごごち、履くことでウキウキするカッコよさ
これらすべてのイメージを「フライング」に込めました。

<ジーンズのこだわり>

履きやすさ、カッコよさに加え、介助のしやすさも両立。
Made in Japanの「心遣い」の技術が沢山詰まっています。

◯『動体裁断(R)動体縫製(R)』を採用しているのが、最大の特徴。
◯座ってもウエストラインが下がらず、ヒザを曲げても裾が上がらない。
◯ソフトストレッチ素材を採用。
◯深い前開け(介助側も着脱簡単)。
◯ひざ上の作ったスマホ用ポケット。
◯後ろは太いベルトループ(介助側が掴みやすく強い)。
◯縫い代を包みこむよう再縫製。アタリが出ない為痛くない。(痛みを感じない方向けにも)
◯マグネット式開閉可能のバックルベルトを採用。簡単に取り外し出来アジャストが可能

報道ステーション収録の時けんぼーが履いているのは フライングジーンズです。

フライングジーンズのお披露目

このジーンズの完成お披露目の場として選んだのが、9月22、23日、山形県寒河江市で行われた、「2018パラカーニバル(グリバーさがえ)」。

パラアスリートの選手の方をはじめ、実際に色々な方に履いてもらって、その気持ち良さを体験してもらいたい。
その生の声を聞いて、完成度をより高めていきたい。

展示試着ブースを作りました。

「4年振りにジーンズ履きました。」

「4年振りにジーンズ履きました。ゴワゴワしちゃって履きにくく敬遠してた。
お金がないからずっとスエット履いていたわけではないんですよ!(笑)」

車椅子のパラアスリートの1人が、けんぼーとの対談で素直にそう語ってくれた。

けんぼーも私も、飛び上がるほど嬉しい瞬間でした。

ブースではパラアスリート、車椅子使用者、健常者、、、何十人にもの方々に履いてもらいました。

「凄い!軽い!!」
「新感覚ですね!」
「ヒザが楽〜」
「ポケットが絶妙。これこれ、ここに欲しかったんだよね。」
「縫い目が全くあたらない。」
「こんなジーパンはじめてです!!」
、、、

履いていることも忘れてしまうくらい気持ちがいい。

皆さんが口々にそう言ってくれた。
喜び溢れる沢山の笑顔もみました。

嬉しかったな。

履いてくれたパラアスリート達とけんぼー、深澤社長

テレビ局、新聞、メディアも注目

2日間でたくさんのメディアが取材に来てくれました。
その方々にも、まずは試着。

着てはじめてわかる履き心地。
展示試着ブースの意味がここにあります。

メディアの皆さんもまずは感動して、それから質問をしてくれます。

早速、山形新聞、そして朝日新聞デジタルの記事が、ヤフーニュースにも
なりました。(是非クリックして読んでみて下さい!)

「知ること」からはじめよう

街中には多くの段差があることを知る。
駅のエレベーターが狭く、凄く遠くにしかないことを知る。

私ははじめて、障害を持つ人と関わりました。

それが、けんぼーでした。

一緒にお風呂に入って、服を着るのを手伝って、電車に乗り、車で移動して、、、
多くのことを知りました。

こんなこともありました。

けんぼーが東京に来て、大手広告代理店で打ち合わせをした日、夜六本木ヒルズで短パン社長に会うまでに、かなり時間が空きました。

けんぼーは日々休みなく働き忙しく、ゆっくり映画館で観る時間もなかったことから、「映画でも観ない?」と言う私の誘いに即OK。「オーシャンズ8」を観ることにして、地下鉄で六本木駅まで移動することにしました。

上映時間まで1時間15分もあります。普通だったらたった20分の距離。
余裕過ぎるほどの時間があります。

でもそこからが大変でした。

乗るまでの駅のエレベーターがかなり遠くにあり、また1本ではホームや改札までも行きません。何度も乗り換える度に、また歩きます、、、
到着駅の六本木も全く同様。まるでジグザクに歩くように、エレベーターを乗り継ぐ。

映画館に着いたら、上映会が上の階。ここでもエレベーターをジグザクに乗り換え、席に着いた時は予告編が終わり、本編が始まる寸前に滑り込みました。

20分の距離を90分もかかったのです。

「知ること」

気持ちを理解しよう、とか
同じ立ち位置で健常者も身障者も、皆んなが同じ世界へ、とか

それはもちろんそう思います。

だけど、そこに行くまで、そこに行く前に、まずは「知ること」。
「理解」する前に、まずは「知ること」なんだと思います。

私はけんぼーとの関わりで、たくさんのことを知り、気づきました。
まだまだ少ないけど、これからも知ろうと思っています。

フライングジーンズ(R 申請中)はやっとスタート地点

生まれたばかりのフライングジーンズ。

皆さんの声を聞いて、より良い商品に仕上げていきます。

まだまだ沢山やることがあります。

「服の持つチカラはまだまだある」

そう信じて、私たちが出来ること、喜んでもらえることをやっていきたいな。

応援、よろしくお願いいたします!!

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岡崎博之

岡崎博之

私は1963年、東京の下町両国に岡崎家の長男として生まれました。 生まれも育ちも、住まいも会社も、みんな両国のチャキチャキの江戸っ子です。せっかちで、いつもかなり熱くなっちゃう怒りん坊、、、だけど涙もろい性格。(笑) 家業の60年を超える老舗ニット会社、丸安毛糸株式会社の3代目社長になり、14年が経ちました。 これからは「世界中のニットを愛する人たちが集う会社」を目指して、どんどん世界に出て行きたいな。 海外留学の経験から、世界の人と交流することが大好き。旅をすること、ゴルフをすること、美味しいものをたくさん食べることが、大切なライフスタイルです。最近はそれに加えて、カメラを持ち歩きたいな!なんて考えています。
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